「教員の給料の仕組みってどうなっているんだろう?」
「誰がどこから支払っているの?」
「内訳はどうなっているんだろう?」
と疑問に思っている先生も多いのではないでしょうか。
この記事では、公立学校の教員の給料の仕組みについて、以下のことをわかりやすく紹介しています。
- 教員の仕組み①:誰が支払ってる?
- 教員の仕組み②:財源はどこから?
- 教員の仕組み③:内訳は?
記事を読むことで、教員の給料の仕組みについて理解できますよ。
教員の給料の仕組み①:誰が支払ってる?
まずは、公立学校の教員の給料を誰が支払っているのかを見ていきましょう。
都道府県が3分の2・国が3分の1
結論から言うと、公立学校の教員の給料は
- 都道府県(もしく指定都市):3分の2
- 国:3分の1
という割合で、都道府県と国が払ってくれています。
あれ?市町村が払うんじゃなかったっけ?
原則、教員の給与は「学校の設置者」が支払うように決められています。
公立の小中学校の「学校の設置者」は地方公共団体(つまり市町村のこと)。
なので、普通だったら市町村が支払うことになっているのですが、「市町村立学校職員給与負担法」という法律で、市町村の小中学校は都道府県が給与を支払うように決まっているのです。
市町村立学校職員給与負担法第一条(タップ)
第一条
市(地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市(次条において「指定都市」という。)を除き、特別区を含む。)町村立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の校長(中等教育学校の前期課程にあつては、当該課程の属する中等教育学校の校長とする。)、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、寄宿舎指導員、講師(常勤の者及び地方公務員法(昭和二十五年法律第二百六十一号)第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を占める者に限る。)、学校栄養職員(学校給食法(昭和二十九年法律第百六十号)第七条に規定する職員のうち栄養の指導及び管理をつかさどる主幹教諭並びに栄養教諭以外の者をいい、同法第六条に規定する施設の当該職員を含む。以下同じ。)及び事務職員のうち次に掲げる職員であるものの給料、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、在宅勤務等手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む。)、へき地手当(これに準ずる手当を含む。)、時間外勤務手当(学校栄養職員及び事務職員に係るものとする。)、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、義務教育等教員特別手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、退職手当、退職年金及び退職一時金並びに旅費(都道府県が定める支給に関する基準に適合するものに限る。)(以下「給料その他の給与」という。)並びに定時制通信教育手当(中等教育学校の校長に係るものとする。)並びに講師(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(昭和三十三年法律第百十六号。以下「義務教育諸学校標準法」という。)第十七条第二項に規定する非常勤の講師に限る。)の報酬、職務を行うために要する費用の弁償、期末手当及び勤勉手当(次条において「報酬等」という。)は、都道府県の負担とする。
引用:市町村立学校職員給与負担法 e-GOV法令検索
一 義務教育諸学校標準法第六条第一項の規定に基づき都道府県が定める都道府県小中学校等教職員定数及び義務教育諸学校標準法第十条第一項の規定に基づき都道府県が定める都道府県特別支援学校教職員定数に基づき配置される職員(義務教育諸学校標準法第十八条各号に掲げる者を含む。)
二 公立高等学校の適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律(昭和三十六年法律第百八十八号。以下「高等学校標準法」という。)第十五条の規定に基づき都道府県が定める特別支援学校高等部教職員定数に基づき配置される職員(特別支援学校の高等部に係る高等学校標準法第二十四条各号に掲げる者を含む。)
三 特別支援学校の幼稚部に置くべき職員の数として都道府県が定める数に基づき配置される職員
さらに、「義務教育費国庫負担制度」により、都道府県が支払う給与のうち3分の1は国が負担すると定められています。
そのため、「都道府県(もしくは指定都市):3分の2」「国:3分の1」という支払いになっているのです。
義務教育費国庫負担制度(タップ)
1.義務教育費国庫負担制度について
義務教育は、国民として必要な基礎的資質を培うものであり、憲法上の国民の権利、義務にかかわるものであって、国は、地方公共団体とともに義務教育にかかる費用を無償にし、国民の教育を受ける権利を保障する義務を負っています。
そのため、国は義務教育費国庫負担制度により、義務教育に必要な経費のうち最も重要なものである教職員の給与費について、その3分の1を負担しています。このことにより、義務教育に対する国の責任を果たすと同時にこの制度を通じて 全国すべての学校に必要な教職員を確保し、都道府県間における教職員の配置基準や給与水準の不均衡をなくし、教育の機会均等と教育水準の維持向上が図られています。
義務教育費国庫負担制度は、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るため、義務教育費国庫負担法に基づき、都道府県・指定都市が負担する公立義務教育諸学校(小・中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程及び特別支援学校の小・中学部)の教職員の給与費について、3分の1を国が負担するものです。(ただし、特別の事情があるときは、各都道府県・指定都市ごとの最高限度を政令で定めることができるとされています。)2.国庫負担の対象
○対象学校
(1)市(指定都市を除き、特別区を含む。)町村立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部。
(2)都道府県立の中学校(中高一貫教育を施すものに限る。)、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部。
(3)都道府県立の小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校の前期課程並びに特別支援学校の小学部及び中学部(学校生活への適応が困難であるため相当の期間学校を欠席していると認められる児童又は生徒に対して特別の指導を行うための教育課程、及び夜間その他特別の時間において主として学齢を経過した者に対して指導を行うための教育課程の実施を目的として配置される教職員に係るものに限る)。○対象職種
校長、副校長、教頭、主幹教諭、指導教諭、教諭、養護教諭、栄養教諭、助教諭、養護助教諭、寄宿舎指導員、講師(公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律第17条第2項に規定する非常勤講師を含む。)、事務職員及び学校栄養職員○対象給与費目
引用:文部科学省「義務教育費国庫負担制度」
給料、扶養手当、地域手当、住居手当、初任給調整手当、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当(これに準ずる手当を含む)、へき地手当(これに準ずる手当を含む)、時間外勤務手当(事務職員及び学校栄養職員)、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、義務教育等教員特別手当、寒冷地手当、特定任期付職員業績手当、報酬及び費用弁償
なぜ市町村が支払わないのか?
教員の給料は原則「学校の設置者」である市町村が支払うことになっているのに、なぜ都道府県が支払うことになっているのでしょうか。
その理由は、主に2つあります。
- 教員の人事異動をやりやすくするため
- 財源の少ない町でも教育の質を高めるため
理由1つ目は、都道府県が給与を支払う(つまり都道府県で同水準の給与ということ)ことで、人事異動を円滑にできるから。
もし市町村ごとに給与が違ったら、人事異動がスムーズにいかなくなるのは目に見えてます。
「うわぁー!来年からA町に異動や〜。。。給料下がるやん…」
みたいなことが起きると、よくないですよね。
そのため、都道府県が支払って同じ待遇を維持することで、人事異動が円滑に進められるのです。
2つ目は、財源の少ない町でも教育の質を高めるためです。
市町村単位で給与を支払うことにすると、大きな市と小さな町・村では、財源に差が出てしまいます。
- B町やC村は財源がないから、教員の給与が低い
みたいなことが起きてしまうと、B町やC村に教員が集まらず「どこの学校でも同じ水準の教育をする」という義務教育の責務を果たすことができなくなってしまいます。
このような理由から、市町村ではなく都道府県が給料を支払うように決められたのです。
すべては「日本全国の子ども全員に質の高い教育を受けさせるため」という目標を達成するために考えられたことだったのですね。
どこでも同じ水準なのは嬉しいけど、
本音を言えばもうちょっと欲しいよなぁ。
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教員の100万円節約術4ステップはこちら >>教員の給料の仕組み②:財源はどこから?
教員の給料が「都道府県」や「国」から支払われていることはわかりました。
では、そのお金の財源はどこから出ているのでしょうか。
答えは、ご存知のとおり「税金」です。
教員のみならず、警察官・消防士・国会議員などの公務員は、国民の税金から給与が支払われています。
(そしてなぜか「税金ドロボー!」という意味不明なクレームを受けることがあるのが辛いですよね…。というか、教員も税金払ってるんですけど。)
ちなみに、国3分の1を負担している「義務教育費国庫負担金」には、年間1兆5,000億円位以上※が使われているとのこと。
※令和3年度 国税庁データより
もっと教育にお金をかけてほしいですね!
教員の給料の仕組み③:内訳は?
最後に教員の給料・給与の内訳について見ていきたいのですが、
そもそも、「給料」と「給与」の違いを知っていますか?
図で表すと以下のようになっています↓
- 給料:給料表額+教職調整額
- 給与:給料+手当
ここでは、それぞれの要素である「給料表額」「教職調整額」「手当」について見ていきましょう。
給料表額
給料・給与を決める1つ目の要素は「給料表額」です。
給料表額というのは、いわゆる「号」とか「級」とかいうアレのことです。
例として東京都の教員職給与表を置いておきますね↓
都道府県によって異なりますが、東京都は以下のように「級」が定められています。
- 1級:講師
- 2級:教諭
- 3級:主任
- 4級:主幹
- 5級:副校長
- 6級:校長
「号」については、基本的に1年間で4つ上がります。
1年間で、ざっくり8,000円給料が増えるイメージですね
全国の給料表や号給・等級の見方については、こちらで詳しく解説してます↓
教職調整額
給料・給与を決める2つ目の要素は「教職調整額」です。
教員は、
- 時間外勤務手当と休日勤務手当を支給しない
- 原則として教員に時間外勤務を命じないこと、命じる場合は「超勤4項目」に限定する
(超勤4項目は①生徒の実習に関する業務②学校行事に関する業務③教職員会議に関する業務読ん非常災害などのやむを得ない場合)
の代わりに、教職調整額として「給料月額の4%」が支給されることになっています。
給料月額の4%というと、仮に月30万円給料をもらう先生なら、
30万円✕0.04=12,000円
12,000円多めに給料がもらえるということになります。
教職調整額や教員の残業代について詳しく知りたい方は、こちらもチェック↓
ちなみに、この教職調整額が13%に引き上げられるかも…?というニュースで話題になりました。
教職調整額がいつから引き上げなのか気になる方は、こちらもチェック↓
ちなみに、ここまでで紹介した
- 給料表額
- 教職調整額
の2つを合わせたものを「給料」と言います。
手当
給与を決める3つ目の要素は「手当」です。
教員は、さまざまな手当をもらうことができます。
- 扶養手当
- 地域手当
- 住居手当
- 初任給調整手当
- 通勤手当
- 単身赴任手当
- 特殊勤務手当
- 特地勤務手当
- へき地手当
- 宿日直手当
- 管理職員特別勤務手当
- 管理職手当
- 期末手当
- 勤勉手当
- 義務教育等教員特別手当
- 寒冷地手当
- 特定任期付職員業績手当
- 退職手当
- 退職年金及び退職一時金並びに旅費並びに定時性通信教育手当
一番わかりやすいのは「住居手当」「通勤手当」あたりでしょうか。
給与明細で確認できるものも多いので、チェックしてみてくださいね。
ちなみに、ここまでで紹介した
- 給料表額
- 教職調整額
- 手当
すべてを合わせたものを「給与」と言います。
教員の給料明細の具体的な見方について、詳しく知りたい人はこちらもチェック↓
まとめ:教員の給料の仕組みは、都道府県・国によって支えられている
教員の給料の仕組みについて紹介しました。
まとめると、以下のようになります。
- 教員の給料は、都道府県2/3・国1/3の割合で支払われている
- 教員の給料には税金が使われている
- 給料(給与)には「給料表額」「教職調整額」「手当」が含まれている
- 給料=給料表額+教職調整額/給与=給料+手当
なんとなくもらってた給料だったけど、こんな仕組みだったのか…!
今後、教職調整額の見直しなどが行われるかもしれないので、教員の待遇がよくなっていくことを期待しましょう!